よくある質問と回答



Q. 村上春樹の「1973年のピンボールについて」に出てくる「ギルバート&サンズ」社の「スペースシップ」とは実在するピンボールなのでしょうか?
 
A. 結論から言って、ギルバート&サンズ社というピンボール・メーカーは、存在しません。従って、村上春樹の「1973年のピンボール」に登場する3フリッパーの「スペースシップ」というマシンも実在しません。

同様に、当然この小説に登場する「ビッグ・ウェイブ」「オリエンタル・エクスプレス」「スカイ・パイロット」「トランス・アメリカ」といった「ギルバート&サンズ」社の他のマシンも存在しません。

しかし、「スペースシップ」という名前のピンボールは存在します。ウィリアムスの1961年のモデルです。ただ、この小説を書いたとき、村上春樹は「スペースシップ」という名前のピンボールが存在しているとは思わなかったと告白しています。つまり、直接のモデルとなったマシンは実在しなかったのです。その後、「スペースシップ」という名前のマシンが実在することを知った村上春樹が同名のマシンを購入しました。その時の経緯は1980年に書かれた「ピンボール後日譚」に詳しいのですが、これは単行本等には収録されていないようです。ウィリアムス社の「スペースシップ」購入後の話は、「ピンボール・グラフィティ」(1989年 日本ソフトバンク)のエッセイの中に紹介されています。これは「村上朝日堂 はいほー!」という短編エッセイ集の中にも「『スペースシップ』号の光と影」、というタイトルで収録されています。

余談ですが「1973年のピンボール」の中でスペイン語の講師が話すピンボールの話は、ギルバート&サンズ社に関する部分以外は、ほぼ事実に基づいています。ウィリアムスやバリーは1999年まで存在したメーカー&ブランドですし、シカゴ・コイン、ゴットリーブも今はありませんが、当時は大手のメーカーでした。

ですから、ウィリアムス「フレンドシップ"7"」は1962年、バリー「グランド・ツアー」は1964年、ゴットリーブ「キング・アンド・クイーンズ」は1965年のマシンで、すべて実在する台ですし、その記述についてもかなり正確で事実に基づいています。

村上春樹自身がこの当時のピンボールに対してかなり造詣が深いことは、小説の中の様々な記述からも容易に想像がつきます。

マシン名だけでなく、ゲームをする上でのテクニックに対する様々な名称1つをとってもかなりのピンボール通であったことは間違いないと思います。

 
 
Q. ピンボールの購入方法について
 
A. 購入の件ですが、幾つかの方法があります。
  1. ピンボールを設置している店舗に直接交渉して、購入する方法です。この場合の価格はケースバイケースなので何とも言えません。廃棄処分直前であればタダでもいいと言うかもしれませんし、新品同様であれば、数十万円の場合もあるでしょう。完全に修理をした状態であれば当然価格も高くなります。ちなみにメーカー新品の販売価格は70万円弱(1998年)です。
  2. 中古のピンボールを扱っているお店が幾つかあります。たいがいは古物商の鑑札を持っているアンティークショップのような所です。価格は10万円台から40万円を超えるものまで様々です。
  3. アメリカから直接自分で輸入するという方法もあります。この場合も価格は千差万別ですし、輸送料がかなりかかります(1台あたり10万円以上)。
どちらにしても、購入後の修理がある程度自分でできないと大変だと思います。もしくは修理ができる人が身近にいることが重要でしょう。ピンボールは頻繁に壊れます。修理に必要となる多少のパーツや工具はある意味では必需品ですし、修理にはさまざまなノウハウと電気的な知識が求められます。